飲食店の自社通販サイトを軌道に乗せるための3つの方法

初めまして。sekkyです。

 

今日は、私自身が運営するパン屋の通販サイトの立ち上げから軌道に乗せるまでの経験から、飲食店を経営している傍、通販もやってみたい、けどどうしたらよいか・・、とモヤモヤしている方々に向けて、「飲食店の通販サイトを軌道に乗せるたった3つの方法」について、話していきます。コロナ禍において大変な苦労をされている飲食店の皆様の一助になれば幸いです。

 

私は、ある企業の商品企画部門で働いている傍、実家が営む飲食店(パン屋)のサイト運営の立ち上げを見様見真似でやってみました。その経験から、飲食店の通販サイトは立ち上げがしやすいことを実感しました。以降、その3つの理由を説明していきます。

 

1. 追加の費用をかけずに販路をつくる

 

企業で商品開発を行う場合、サービス開始直後は、サービスについて知っている人が少ないため、多額の広告費を払い、サービスを軌道に乗せていきます。私自身、所属している会社では、集客がなかなかできずに苦労した経験を数多く経験しました。
同様に、何も持たない人が通販サイトを立ち上げようとした場合、多くの苦労をするはずです。なぜならば、その通販サイトを知っている人が誰もいないため、集客をするために、多額の広告宣伝費を支払う必要があります。

一方で、飲食店が通販サイトを立ち上げる場合、実店舗を持っていることから、そこからの流入をさせやすいという点があります。

もう少し詳しく説明します。ここでは、4Pを使って説明していきます。(ここでは、通販でクッキーを売るとした場合、お菓子作りが好きなAさんと、ケーキ屋さんを営んでいるBさんを比較しながら説明していきます。)

商品企画をする際に、4Pという言葉を聞いたことがあると思います。「マーケティングミックス」とも呼ばれ、市場において、自分たちの商品・サービス・店舗がどのような優位性を持っているか(持たせるか)を分析する際のフレームワークとして、広く一般的に使われています。

  • Product(製品)
    Aさんは、お菓子作りが大好きなので、この味を世の中の人に届けたいという思いから通販サイトを立ち上げてようと思い立ったとします。ただ、そのためには、オーブンや材料を保管するための大型の冷蔵庫などの設備を新たに購入するために投資する必要が出てきます。また、美味しいクッキーを作るためには、良い材料を調達しなければなりませんが、一般的にはそのような材料は、問屋さんを通じて大量に調達する必要があります。ただし、どれだけ売れるかわからない中で大量の原材料の在庫を確保することは容易ではありません。
    一方で、ケーキ屋さんを営んでいるBさんは、すでに実店舗を経営しているため、そのような設備はすでに持っていますし、問屋さんとの繋がりもあるため、原材料の調達はもとより、原材料の在庫を持っていたとしても、実店舗で販売するための材料として使うこともできるため、リスクは最小限に抑えることができます。この最小限の追加のコストで製品を製造可能なことが実店舗を持っている飲食店が通販サイトを立ち上げることを勧める1つ目の理由です。
    また、実はすごく大きな点として、実店舗を運営する飲食店は、お客さまの声を直に聞いて商品を作ってきた経験があるため、線の良い商品を作れる、または既にある、ということも飲食店の通販サイトが立ち上げやすい理由の一つでもあります。ただし、一つだけ注意が必要なことは、「実店舗で」売れる商品=「通販サイトで」売れる商品とは限らないという点です。この詳しい説明は、次回以降に説明させていただきます。(キーワードは「ササゲ」と「輸送」です。)

  • Price(価格)
    話をAさんに戻すと、上記の違いは価格にも表れてきます。新たな機材や原材料を購入するといった投資を行っているため、それらを回収するための費用を価格に転嫁して販売していく必要があります。一方でケーキ屋を営むBさんは、上記の通り追加の設備投資を最小限しかかかりませんので、最低限のコストで製造することができます。
    また、後述していきますが、認知度を上げるための広告宣伝費も当然、価格に転嫁されますので、そのようなコストも抑えることができれば、価格を下げることができます。

  • Place(流通)
    Placeの定義にもよりますが、販路としての通販サイトと捉えた時、4Pのうち、唯一違いが出てこないパートです。ただし、ここで言いたいのはインターネットが齎した環境変化です。
    言わずもがな、インターネットはどこでも好きな時に知りたい情報が手に入れられます。また、スマートフォンの普及により、情報へのアクセスは格段に上がったと言われています。ここまでは買い手側の環境変化です。
    一方で、事業者側の環境変化は、SaaS(Software as a Service)の発展です。従来、通販を行うとした時には、表側のホームページを作成するとともに、裏側の受注管理や伝票発行などの仕組みなどの構築を多くのコストをかけて作らざるをえませんでした。しかしながら、現在では、ホームページ作成、受注管理、メール送信、伝票発行等々、必要な機能(業界用語では「カート機能」と言います。)が数千円という価格で利用できるサービスが数多く存在します。
    (具体的には、カラーミーショップ、BASE、Stores、らくうるカートなどです。これらの細かい違いについても、次回以降に譲りたいと思います。)
    その結果、Aさんのような趣味の延長線上でも通販が始められるようになりました。もちろん、ここだけ切り取れば、今までは多額のシステム投資をせざるをえず、資金に余力のある一部の事業者だけのものだったものが、個人でも始められるようになったという点で、通販事業への参入障壁が低くなった、といえます。ただし、全体を俯瞰してみると、良い商品と実店舗や認知度やブランド、と言った飲食店ならではのメリットを生かし、かつ月数千円のPlaceで販路を確保できるという点は、明らかに、飲食店におけるメリットになっていると思います。

  • Promotion(広告)
    話をまたAさんとBさんに戻すと、Aさんは当然のことながら、今までお客さまにクッキーを売ったことはないので、広告宣伝をしない限り認知度アップはしていくことはできません。そのため、多くの通販専業者は一般的に集客を「モール」と呼ばれる会社に頼っています。その代表が「Amazon」または「楽天」です。
    彼らの仕組みは、集客(及びカート機能)を行う代わりに、販売手数料を売り手側から収受するをビジネスモデルであり、その販売手数料は一般的に15%となっています。
    では、ケーキ屋さんを営んでいるBさんはどうかというと、もちろんモール等を活用して効率的に集客を図っていくという戦略を取る方法もあります。ただし、そこには一つだけ注意すべきポイントがあります。それは、モールは集客を担っているため、15%の手数料は、永遠に払い続ける必要があります。そのため、そのコストを払ってでも利益が出る商品を作るという点での競争の難易度が上がる、もしくは利益率を圧迫することに繋がります。一般的にクレジットカードの手数料が4%程度なのに対して、モールの手数料はその約4倍という点を注意する必要があります。
    一方で月数千円で、自社サイトが作れるサービス(カート機能)を使えば、ネット上での店舗が構えられるので、中長期的に売り上げが増やすことを見越して行けば、収益性は高くなっていきます。ただし、もちろん、誰しもそんな簡単に行けばAmazon楽天と言った企業が必要なくなってしまうので、やはり自社サイトだけでの通販サイトの運営はPromotionの部分で大きな課題を抱えていると言わざるをえません。そこで、サイト構築までは簡単にできたけど、売り上げが伸びないというフェーズでの2つ目のポイントについてご説明します。

2. 実店舗を生かして販路を拡大させる

「1. 追加の費用をかけずに販路をつくる」で説明したように、商品開発のハードルが低い飲食店がネットにあるカート機能を使えば、容易にサイトが構築できます。ただし、あくまでサイト立ち上げというフェーズであり、これだけでは、タイトルにある通りの「軌道に乗せる」というフェーズには至っていません。
そこで、飲食店ならではのメリットを生かして、販路を拡大させる2つの方法をご説明します。

  • オムニチャネル
    一般的に思いつく方法としてあげられるのが、実店舗での告知です。実際にご来店いただいたお客さまに、チラシやショップカードなどをお渡しし、その際に、「オンラインショップがオープンしたので、ぜひそちらもご利用ください」とお伝えすることで、実店舗とネットの接点を融合させていくというものです。これにより、物理的距離や営業時間と言ったことがボトルネックになっているお客さまにとっては有効といえます。ただし、ここには一つ難点があり、実際に来店いただいているお客さまは、商圏が比較的近距離にあることから、通販に際して「送料等を払うのなら実際に取りに行く」と言った考えになることもありますので、全てにおいて有効とはいえません。
  • まとめサイト
    こちらの方がお伝えしたいことですが、実店舗を持っていると店舗の情報はGoogle食べログ、Rettyをはじめとしたグルメサイトに情報が掲載されています。これらの情報は、店舗側が掲載しなくてもネットのユーザーが生成するコンテンツ(UGC:User Generated Content)ですが、店舗のオーナーであれば、ある程度自由にコンテンツを追加することができます。
    具体的には、Googleでは「このビジネスのオーナーですか?」という部分をクリックし、Googleに掲載されている店舗の電話番号に、電話が架電よる認証をもってオーナーであることが確認されます。(約5分程度で完了します。)
    この機能を使うことで、店舗の通販ページのURLと通販サイトがオープンした旨を告知することで、ネットで検索したユーザーにリーチすることができます。非常に簡単なことですが、これによるメリットを2つ説明します。

    ①まずは、Google食べログ等のグルメサイト自体への情報追加は無料で行うことができます。なぜならば、彼らが収益源としているのは、別であり、情報を充実されること自体においては、むしろ歓迎してくれます。

    ②次に、サイトにアクセスしてくれる人は、意外と多いことがわかると思います。(具体的には会員登録をすると、サイトの表示回数や訪問者数というデータが閲覧できます。)また、調べている人は近所の人ではなく、地の利のない観光客や通りすがりの人が多いため、通販サイトの購入ユーザーとしては合致する可能性が高くなります。

    ③最後に、実店舗とのシナジー効果です。通販サイトを運営しているということを告知しておくことで、店舗自体の信頼性向上に繋がったり、通販サイトでみた商品が気になって実際にきてくれたりと、双方向での集客につながる可能性があります。

3. 集客状態を分析する
これまで、自社サイトの立ち上げから集客方法までお話してきました。これで概ね完了です。ただし、もちろんうまく全てがうまく行くとは限りません。そこで最後に問題点を分析しながら、サイト改善を行っていく必要があります。観点は2つあります。それは「流入経路」と「サイト離脱」です。

  • まず、「流入経路」ですが、サイトの分析機能で、参照元を集計する機能が大抵のカートには実装されています。よって、どこからの流入が多いかということを分析することができます。例えば、自分の食べログページにアクセスしてくれた方が100人いたとします。そのうち、5人しか通販サイトに来てくれていなかったとしたら、アピールの仕方がよくないのかもしれないということで、食べログ側の説明文を修正してみます。1回で上がるとは限りませんが、何度かやることで流入率が上がるかもしれません。この際のポイントはユーザーの立場になって考えてみるです。自分がどこかの食べログをみた時にどのような文言が書いてあったら、見に行ってみたくなるかを徹底的に考えることです。
  • もう一点は「サイト離脱」です。これは滞在時間やどのページが閲覧されているかということを分析する機能で、これも標準的にカートに実装されている機能です。例えばトップから商品の詳細ページにたどり着いていないのであれば、サイト自体がわかりにくい、または魅力を伝えられていない、ということなので、文言や写真を変更する必要があります。

以上が、私がサイトを軌道に乗せるために行ってきた3つのことです。
最後にお伝えしたいことは、全ての飲食店がこれまで、魅力のある食べ物を作っていても、限られた範囲の中でしか知られていなかったこれまでに対して、現代にあるサービスをうまく使えば、実店舗での販売だけでない事業展開の可能性があるのではないかということです。


今後も継続的に、自社通販サイトを軌道に乗せる方法を書いていこうと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。